ファクタリングの返還請求訴訟の事例とは?認められたケースや注意点など
ファクタリングによる資金調達では申込者と会社でトラブルになるケースがあります。また、トラブルが深刻化し、返還請求訴訟などに発展するケースがあるのです。
この記事では返還請求訴訟などのトラブルになって認められたケースと認められなかったケース、ファクタリング会社側とトラブルになるリスクなどを解説します。また、返還請求訴訟などのトラブルにならないために注意したいポイントも併せて説明します。
ファクタリング会社との返還請求訴訟などトラブルについて知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
ファクタリングとは?返還請求訴訟などトラブルの前に
返還請求訴訟などファクタリング会社とのトラブルについて説明する前に、簡単に債権の資金化サービスについて解説します。
ファクタリングとは債権の譲渡・売却による資金調達方法です。
たとえば100万円の売掛金があったとします。この売掛金が取引先から振り込まれるのは2024年3月末日でした。現金が必要でも、売掛金などの債権の場合は支払い日にならないと取引先から受け取ることはできません。
ファクタリングでこの売掛金を譲渡・売却すれば、支払い日より前に資金調達できます。債権譲渡・売買で必要な資金を確保する方法がファクタリングです。
担保不要や借金ではないなどの特徴
ファクタリングは債権譲渡・売買による資金調達方法なので、融資のような負債(借金)ではありません。そのため、利用後に負債が増えることもありません。
この他に、ファクタリングは保証人・担保不要になっています。担保や保証人は「貸したお金を回収できないときの備え」だからです。お金の貸し借りではないため、担保や保証人は不要になっています。
ファクタリングは違法?許認可は必要?
ファクタリングでは返還請求訴訟などトラブルになるケースもあります。ただ、そもそも、ファクタリング自体は合法なのでしょうか。許認可なしでサービスを提供できるのかも問題です。
ファクタリングは違法ではありません。民法466条には「債権は自由に譲り渡してよい」と書かれています。有償・無償は問いません。売掛金などを譲渡・売却して資金調達しても特に問題ないということです。
また、ファクタリング会社がサービスを提供する際は金融庁の貸金業の登録は必要ありません。融資などの貸金業ではないからです。
ファクタリングのトラブル|返還請求訴訟で争われたケース
ファクタリングでは返還請求訴訟など申し込み先の会社側とトラブルになってしまうケースもあります。実際にトラブルになって返還請求訴訟などになってしまったケースもあります。
・裁判で争われて認められたケース
・裁判で争われて認められなかったケース
以上の2つの事例について見て行きましょう。
裁判で争われて認められたケース
ファクタリング会社と看板を掲げていた会社で給与を現金化しました。給与を現金化した申込者の方からサービスの提供会社に対して返還請求訴訟が提起されたケースです。
このケースでは返還請求が認められました。
・給与ファクタリングは貸金業である
・貸金業の登録をしていない場合はヤミ金と同様で返還義務もない
・会社側との契約が無効になれば、以前に支払った分も返還してもらえる
裁判では以上のようなポイントが認められました。
このケースは申込者とサービスの提供会社がトラブルになり、申込者側の言い分が認められた事例です。
裁判で争われて認められなかったケース
サービスの提供会社と申込者が返還請求訴訟をして認められなかったケースもあります。
申込者が「サービスの提供会社に債権譲渡をしたが、これは貸金契約である」と主張して認められなかったケースもあります。
この他に申込者が「利息制限法に反する」「出資法違反である」などと主張し返還請求訴訟をしたケースもあるのですが、いずれも主張は認められませんでした。
返還請求訴訟の他にファクタリングでトラブルになった事例
申込者が返還請求訴訟を提起した事例の他にもファクタリングでトラブルになったケースがあります。
・償還請求権でトラブルになった事例
・債権の一部買取で問題になった事例
償還請求権のあるファクタリングでトラブルになった事例
ファクタリングのサービス内容・契約内容が「償還請求権あり」になっており、申込者とサービスの提供会社がトラブルになった事例です。
償還請求権とは売買した債権を回収できなかったときに「代わりに払え」と言える権利のことです。償還請求権ありの契約を結んでいると、債権を資金化した後に回収不能になると会社側から「代わりに払ってください」と請求されてしまいます。
ただ、ファクタリングは基本的に「償還請求権なし(ノンリコース)」で契約します。債権を回収できないときのリスク・損失は会社側が負う契約内容です。
償還請求権ありの契約は実質的に「融資(貸金)ではないか」とトラブルになり、「償還請求権ありの契約内容だと融資とほぼ同じ」と認められました。
売掛金などの一部買取でトラブルになった事例
ファクタリングで売掛金の買取を依頼したところ、会社側が買ってくれたのは債権の一部でした。売掛金などの一部買取により「これは融資ではないか」「債権を担保として使っているのではないか」とトラブルになりました。
売掛金など債権の一部買取は融資であると認められた事例です。
ファクタリングの返還請求訴訟での注意点
仮にファクタリング会社と返還請求訴訟など何らかのトラブルになった場合、注意したいポイントがあります。注意点は3つです。
・言い分が必ず認められるわけではない
・費用や時間がかかる
・主張が認められにくいケースがある
返還請求訴訟を提起しても主張が必ず認められるわけではない
ファクタリング会社に対して返還請求訴訟を提起しても必ず言い分を認めてもらえるわけではありません。言い分を認めるかどうかは裁判所が判断することなので、返還請求訴訟で「言い分は認めない」と判断される可能性も考えておく必要があります。
返還請求訴訟を提起すると費用や時間がかかってしまう
返還請求訴訟を提起してもすぐに判決が出るわけではありません。判決が出るまでには時間がかかります。どのくらい時間がかかるかはケースバイケースですが、複雑な主張・事情があるほど判決まで時間がかかると考えた方がいいでしょう。
また、返還請求訴訟には弁護士費用や裁判費用などがかかります。トラブルに対処するには時間やお金が必要になるという点に注意が必要です。
償還請求権なしの契約は主張が認められにくい
ファクタリングは原則的に「償還請求権なし(ノンリコース)」の契約です。
償還請求権なしの契約はサービスの提供会社側がリスクを負うことになるため、申込者側の主張が認められにくくなる傾向にあります。
ただ、主張が認められるかどうかは、実際に返還請求訴訟を起こしてみないと分かりません。最終的に判断するのは裁判所だからです。
返還請求訴訟など何らかの対処を考えている場合は弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
ファクタリングで返還請求訴訟などのトラブルにならないために
ファクタリングで返還請求訴訟などのトラブルにならないためには3つのポイントが重要です。
資金調達でトラブルになってしまうと、それだけでマイナスです。3つのポイントに留意し、トラブルにならないよう注意してください。
ファクタリングについて理解する
サービスの提供会社とトラブルにならないためにも債権の資金化サービスについてよく理解しておくことが重要です。ファクタリングの基本的なポイントをおさえておくことで、勘違いによるトラブルを減らせます。
・ファクタリングは売掛金などの債権を譲り渡すことで資金調達する方法である
・契約は原則的に「償還請求権なし」になっている
・負債ではないので金利は付かず、担保や保証人も不要である
このような基本的なポイントをおさえておきましょう。
分からないことがあれば事前にファクタリング会社に確認しておくことが重要です。
契約内容や書類をしっかり確認する
トラブルを回避するためにも契約書などの書類をしっかり確認することが重要です。
契約書類などをしっかり確認することで、
・ファクタリングに偽装した貸金サービスを見抜ける
・サービスの内容に対する勘違いをせずに済む
など2つのメリットがあります。
「債権の一部買取」や「償還請求権あり」など、貸金サービスに等しいと判断されたトラブルがありました。契約書などの書類をしっかり確認することで、ファクタリングに偽装した貸金サービスを見抜けるというメリットがあります。問題がありそうなサービス・契約内容を前もって避けることでトラブルも回避可能です。
また、サービス内容はしっかりファクタリングであっても、契約書などを確認していないと、サービスの提供会社と申込者の間に食い違いが発生する可能性があります。両者の食い違いもトラブルの原因になります。トラブル回避のためにも確認は重要です。
二重譲渡などを行っていないか気を付ける
二重譲渡とは同じ債権を2社(2者)以上に譲り渡すことです。A業者とB業者に同じ売掛金を譲渡した場合は二重譲渡に該当します。
・二重譲渡を画策して業者側にバレた
・実際に二重譲渡した
二重譲渡は禁止されています。
このようなケースでは返還請求訴訟になるかどうかに関わらず、ファクタリング業者と深刻なトラブルになることは言うまでもありません。
うっかり2つの業者に同じ債権を譲渡・売却していないか注意する必要があります。また、二重譲渡を故意で行うことにはリスクがありますので、併せて注意してください。
ファクタリングの返還請求訴訟の事例とは?認められたケースや注意点のまとめ
ファクタリングの返還請求訴訟やトラブルの事例をご紹介しました。
資金調達でトラブルになり、仮に裁判ともなれば費用も時間もかかってしまいます。資金調達としては失敗と言えるかもしれません。
スムーズな資金調達を行うためにもトラブルは回避する必要があります。ファクタリングの基礎を知ることや契約書のチェックなど、基本的なポイントに注意することが重要です。
また、気になることや不安なこと、疑問点などは、サービスの利用前に申し込み先の業者へ確認しておくことをおすすめします。トラブル防ぎ資金調達を成功させるためにも重要なポイントです。