ファクタリングの与信限度額とは?定義や算出方法について解説
取引先とのトラブルを防ぐため、与信管理をスムーズにしたいと考えていませんか。
そこで重要なのが、ファクタリングにおける与信限度額です。
金額が高いほど売掛金が健全で、取引先の信用力も高いといえます。
ファクタリングを通して取引先の信頼性を知れば、健全なネットワークを築けるでしょう。
今回は与信管理をスムーズにしたい経営者のため、与信限度額の定義や重要性などをまとめました。
目次
与信限度額とは?
与信限度額とは、ファクタリング業者が対応可能な総債権額の上限です。
この金額は売掛金と同額でないため、決まり方をよく覚えておきましょう。
与信限度額の基本的なポイントを以下で解説します。
業者が対応可能な総債権額
一般的に与信限度額は、得意先ごとに決める総債権額の上限です。
ファクタリング業者はさまざまな企業から、債権の一種である売掛金を買い取ります。
しかし企業ごとに、買い取り可能な売掛金の上限は違うのです。
ファクタリング業者は売掛金を評価したうえで、買い取り可能な金額を決めています。
与信限度額が必要なのは、不良債権をつかまないためです。
ファクタリング業者は売掛金の買い取り後、指定された期日まで債務者の支払いを待ちます。
しかし債務者が期日を守らないと不良債権になり、業者は損失を免れません。
多くのファクタリング業者はノンリコース契約で売掛金を買い取るため、取引先の債務不履行後も未払い金を企業に請求できず、損失を背負うことになります。
損害リスクの抑制のため、多くのファクタリング業者は与信限度額を設けるのです。
与信限度額の決め方
ファクタリング業者はさまざまな基準で、与信限度額を決めます。
主な基準項目は以下のとおりです。
1.財務情報
2.信用情報
3.取引履歴
4.業界状況
5.経済状況
6.取引先の企業規模
7.売掛金の支払い期日などの取引条件
8.担保の有無
たとえば財務情報は、取引先の貸借対照表や損益計算書などから、金銭的状況を調べます。
ほかにも信用情報として、過去の取引履歴や金融事故の有無も見逃しません。
また特定業種や経済状況など、社会情勢が与信限度額に影響することもあります。
たとえば取引先が扱うサービスの需要が少ないと、与信限度額が低くなるかもしれません。
ファクタリング業者は、社会情勢や取引先の特徴などから、売掛金をいくらまで買い取れるか判断します。
さまざまな項目から与信限度額を総合的に決めるので、取引先の状況によっては売掛金の買い取り額が限られたり、売却を断られたりするかもしれません。
与信限度額は売掛金の額ではない
与信限度額で注意すべきなのは、売掛金の額とイコールでないことです。
ファクタリング業者は、売掛金ごとに与信限度額を決めています。
しかしその金額は、売掛金に対する掛け目に応じて決まるのです。
以上から企業は、想定より調達額が低いケースに注意してください。
たとえば1000万円の売掛金を、ファクタリング業者に売った場合です。
与信限度額は、1000万円以内のうち業者が決めます。
仮に取引先の信用力が低いと、600万円~700万円のように厳しい査定結果になるでしょう。
企業が800万円以上の調達を期待していれば、想定を下回る形です。
このように与信限度額の関係から、売掛金の額面どおりの金額を受け取れるわけではありません。
与信限度額は掛け目で算出される
与信限度額の算出には、掛け目がかかわります。
決定基準も決まっているので、ファクタリングの依頼前に覚えておきましょう。
一般的に取引先のリスク次第で掛け目が変わり、算出額に影響を与えます。
掛け目と与信限度額の関係性を、以下で確かめてください。
掛け目とは売掛金に対する買い取り額の割合
掛け目とは売掛金に対して、ファクタリング業者が決める買い取り額の割合で「買い取り率」とも呼ばれます。
ファクタリングで売掛金を売るときも、額面全額をもらえるわけではありません。
業者が掛け目を定めていて、そのぶんだけが入金されます。
以上から売掛金の金額の大きさだけでなく、取引時の掛け目もチェックしてください。
たとえば500万円の売掛金を売却し、掛け目が80%、手数料が10%の場合です。
掛け目を計算された結果、500万円の80%である400万円が残ります。
さらに手数料10%を差し引かれると、40万円が支出となり、調達額は360万円です。
ファクタリングの結果、手数料が大きく、掛け目が小さいほど調達額が低くなります。
支払い期日を待たずに、早期換金できるのがメリットの一方、手数料と掛け目の関係で入金額が限られる点に気をつけましょう。
掛け目がある理由
ファクタリング業者は、売掛金のトラブルのリスクに対応するため、掛け目を設けます。
売掛金を支払う取引先によっては、支払い期日を守れません。
期日が破られると、ファクタリング業者は売掛金の回収が不可能になり、貸し倒れの損害を受けます。
こうしたリスクへの対策として、掛け目で差し引いた分を保証金として預かるのです。
売掛金の回収ができなければ、差し引き分を損害の補填に充てます。
以上から企業は売掛金を売るとき、取引先の信用力を事前に調べておきましょう。
信用力に欠ける取引先の売掛金は、掛け目の少ない可能性があるからです。
掛け目とは別に手数料も設けられており、こちらもファクタリング業者の貸し倒れ対策として使われます。
不健全な売掛金に対応するため、掛け目を設けているのです。
売掛金のリスク次第で掛け目は変わる
売掛金のリスク次第で、ファクタリング業者の掛け目は違います。
一般的な掛け目は70~90%とされますが、リスク次第で相場から外れるかもしれません。
信用力に欠ける売掛金なら、ファクタリング業者が不安視した結果、60%の掛け目を決めることもあります。
以上から企業は、信用力のある売掛金の売却を心がけてください。
たとえば売掛金の取引先が中小企業だと、掛け目が低くなりやすいでしょう。
また企業の初回利用だと、ファクタリング業者との関係性が構築できていないため、低い掛け目の可能性が生じます。
取引先の規模が大きく、ファクタリング業者の利用実績があれば、80%以上のような高い掛け目を期待できるでしょう。
掛け目はファクタリング業者と、売掛金の内容次第で変わります。
健全な取引先と付き合うだけでなく、業者との長期的な関係性も大事です。
与信限度額で取引先の信頼性がわかる
企業は与信限度額から、取引先の信頼性を確かめられます。
ファクタリングの審査結果や契約条件を見て、ビジネス上の関係を見直してもよいでしょう。
取引先の信頼性と与信限度額の関係を解説します。
ファクタリングの審査結果で取引先の信用力がわかる
取引先の信用力は、ファクタリングの審査結果でわかります。
審査で重要視されるのは、取引先の健全性です。
仮に落ちてしまうと、取引先の財務状況や経営に問題があるでしょう。
このように企業はファクタリングの審査結果から、取引先の状況を把握できます。
企業によっては本来の業務が忙しく、取引先のリサーチが難しいでしょう。
しかしそうした状況でも、ファクタリングの審査結果から、取引先の実態がわかるかもしれません。
業者によってはAIを用いて、短時間で結果を割り出します。
即日で結果がわかれば、本来の業務に集中しながら、取引先の与信管理が可能です。
以上からファクタリングの審査で、取引先の経営状況や与信限度額などを想定できます。
取引先の信用力は契約条件に影響する
取引先の信用力は、売掛金の取引条件に影響を与えます。
たとえば取引先が信用力に優れていれば、掛け目も高くなるでしょう。
手数料も安ければ、企業は有利な条件で取引できます。
ファクタリング業者は資金回収リスクを抑制する一方、回収の可能性が見込まれれば、買い取り額が高くても引き受けるでしょう。
一方取引先の財務状況が思わしくなければ要注意です。
ファクタリング業者は資金回収の失敗を想定し、与信限度額を低くすることがあります。
このように売掛金の取引条件は、取引先の信用力がカギをにぎるのです。
新しい取引先は評価が低くなりがち
基本的に新しい取引先は、与信限度額が低くなりがちです。
企業と取引先の取引実績が乏しいと、ファクタリング業者も売掛金のリスクが高いと判断します。
業者は取引先の実態を把握しきれず、資金回収失敗のおそれがあると考えるためです。
以上から売掛金の取引先は、企業と一定の信頼関係があるとよいでしょう。
取引履歴があれば、ファクタリング業者も信用力を見込むためです。
一方新規取引先の売掛金は、業者からの評価が低く、与信限度額も限られるでしょう。
与信限度額を高くするには健全な企業との信頼関係が大切
ファクタリングでの与信限度額を高くするには、健全な企業と信頼関係を作ってください。
それには取引先のリサーチが大切です。
たとえば取引先が積極的に事業をしているか、実在しているかなどを調べてください。
加えて貸借対照表や損益計算書、商流などの分析を通し、財務状況を把握しましょう。
このようなリサーチで、他社の健全性を見分けられます。
ファクタリングで多くの資金調達をするには、健全な取引先の売掛金の提供がセオリーです。
この条件を満たすため、日ごろからのリサーチを通して、信頼性のある取引先とのコミュニケーションを心がけましょう。
ファクタリングの与信限度額のまとめ
ファクタリングの取引条件では、与信限度額が重要です。
売掛金の取引先の信用力に応じて、業者が金額を決めます。
与信限度額は売掛金全体の金額のうち、掛け目に応じて算出されるしくみです。
取引先が健全なら掛け目も大きく、まとまった資金を調達できるでしょう。
企業はファクタリングがうまくいくように、普段から健全な取引先と付き合ってください。
ビジネス上の健全な関係性が、ファクタリング業者との信頼関係も築くからです。