違法なファクタリングを利用した場合、どのような影響がある?
ファクタリングは企業の資金繰りを改善するための有効な手段ですが、利用には慎重さが求められます。ファクタリングに関心がある企業が、実際に利用できない理由の一つに「違法な業者に騙されるかもしれない不安」があります。実際、ファクタリングを巡るトラブルは後を絶たず、ニュースなどで見聞きした経営者は少なくないでしょう。
近年、ファクタリング業界の変化は目まぐるしく、規制も複雑化しています。金融庁による監視強化や、新たな自主規制の導入など、状況が刻々と変化している中で安全にファクタリングを活用するには、最新の情報と正しい知識が不可欠です。
本記事では、ファクタリングの違法性に関して解説します。ファクタリング自体には違法性はなく、合法的な手段であること、リスクを回避しながら利用する方法など、具体策について紹介します。正しい知識を身に着け、最新の情報を押さえることで、ファクタリングを効果的に活用し、事業の成長につなげられるでしょう。
目次
ファクタリングは違法?関わる法律と規制
ファクタリングの合法性を判断するには、関連法規と規制の理解が欠かせません。ファクタリングに関わる主要な法律と、監督機関による規制の動向について解説します。
ファクタリングに関する主要な法律
ファクタリングには複数の法律が関係しています。代表的な法律は民法、貸金業法、出資法、利息制限法です。これらの法律の適用範囲と影響を正確に把握することが、違法性の判断につながります。
ファクタリングは合法
ファクタリングは、日本では民法第466条に基づく合法的な「債権譲渡契約」として認められています。違法であると誤解されることがあるのは、違法な業者が行う、ファクタリングに見せかけた融資や高額な手数料が原因です。
貸金業法の適用範囲
貸金業法は、金銭の貸付けを業として行う者に適用される法律です。債権譲渡の一種であるファクタリングは、原則、貸金業法の適用外です。しかし、金銭の貸付けと判断される場合は、貸金業法の規制対象となる可能性があります。
たとえば、償還請求権(売掛金が回収できなかった場合、業者が利用者に対して売掛金の補填を求められる権利)がある場合、貸付けとみなされる可能性が高くなります。貸付を行うには貸金業登録が必要となり、未登録のまま業務を行うのは違法です。
出資法と利息制限法の影響
一方、利息制限法は、契約上の利息の上限を定める法律です。金銭の貸付けと判断された場合、この法律の適用を受けます。利息制限法で定められた金利(元本に応じて年15%〜20%)を超える部分は無効となります。
金融庁による監視と規制の動向
金融庁は、ファクタリング業界に対する監視を強化し、違法な取引や不適切な営業を防ぐため、さまざまな施策を講じています。規制の動向を把握することは、安全なファクタリング利用の第一歩となるでしょう。
金融庁では、闇金業者によるファクタリングに見せかけた高金利の貸付けや、悪質な取り立てについて、注意するよう促しています。とくに、労働者がまだ受け取っていない給与を債権として利用する「給与ファクタリング」と呼ばれる手法は、厳しく警告されています。
そのほか、利用者に対して、正当な業者と悪質な業者を見分けるための情報提供を積極的に行い、契約書の内容確認や手数料の相場確認などについて発信しています。
現在は、ファクタリングを規制する直接的な法律はありません。しかし、悪質な違法業者によるトラブルの増加に伴い、規制強化が強まる可能性があります。とくに給与ファクタリングについては、最高裁判所が貸金業に該当すると判断した事例もあり、法的整備が進む可能性があるでしょう。
IT技術の進展やスマートフォンの普及により、オンラインで完結するサービスが増加しましたが、利用者の利便性が向上する一方、これまでとは異なる新たな規制が必要になるかもしれません。
利用者は信頼できる業者を選び、契約内容や手数料について十分に確認し、理解することが大切です。
違法な業者やファクタリングを見分けるには
違法なファクタリングを利用した場合、企業の資金繰りを悪化させるだけでなく、トラブルに巻き込まれるリスクも高まるでしょう。違法とされるファクタリングや業者を見分けるための方法を紹介します。
違法なファクタリングの特徴と見分け方
違法なファクタリングには法的に罰せられるリスクが伴うため、騙されないことが何よりも大切です。ここでは、違法なファクタリングと業者の典型的な特徴、見分けるための方法について解説します。
違法なファクタリングとは
悪徳業者は、以下のような不正な手法を用いて、利用者から資金を巻き上げようとします。
給与ファクタリング
給与ファクタリングは、貸金業登録を受けていない業者が高額な手数料を請求する可能性が高いものです。労働者は給料日を待たずに資金を手にできますが、悪質な業者が後を絶ちません。手数料が年率で数百%に達することもあるため、金融庁は注意を呼びかけています。給与金額よりもかなり少ない金額しか手にできず、利用者の生活が困窮する可能性が大きいでしょう。
偽装ファクタリング
実際は債権の売買ではなく、違法な貸し付け契約です。高額な手数料を請求されるのに加え、償還請求権ありの契約となっているため、債権回収のリスクを利用者が負うように仕組まれています。
高額な手数料
ファクタリングの手数料は、通常8%~20%程度であることが多いといわれています(2者間の場合)が、違法業者はこれを大幅に超える手数料を請求するでしょう。年率に換算した手数料率が、利息制限法で定められた上限金利を超える場合はとくに注意が必要です。
要注意!違法な業者の典型的な手口とは
違法業者は、巧妙な手口を使って利用者を罠にはめようとします。手口は以下のようなものです。
・隠れた金利
手数料の中に金利分を紛れ込ませることで、実質的な金利が法定上限を超えているにもかかわらず、分かりにくくするケースがあります。「事務手数料」や「調査費」などの名目で追加費用を請求し、実質的な金利を引き上げる手口を使ってくるかもしれません。
・わかりにくい契約条件
契約書の細部に不利な条件を忍ばせ、後から追加の支払いを要求するケースです。たとえば、債権の買戻し条件を小さな文字で記載し、実質的な貸付けとして機能させる例があります。契約書が交付されない場合や、口頭での説明と異なる内容が記載されている場合も警戒が必要です。
・圧力的な営業
「今日中に契約しないと優遇条件が適用されない」など、不当な圧力をかけて契約を急がせる違法業者もいます。もしこのような言葉を言われたら、その業者と契約を結ぶのはやめましょう。
・無登録、無許可での営業
必要な登録や許可を取得せずに営業している業者は違法です。貸金業登録が必要な取引形態であるにもかかわらず、行っていないケースがあります。
利用者は違法な業者の手口を理解し、警戒することが大切です。契約前には必ず複数の業者を比較し、条件を慎重に検討することをおすすめします。また、不明点がある場合は、弁護士や公的機関に相談することも有効な対策です。
利用したファクタリングが違法な場合、深刻なダメージを被る可能性があります。信頼できる業者かどうかを慎重に確認し、高額な手数料や不透明な契約条件を提示される場合にはとくに注意が必要です。
安全な業者の選び方
安全な取引ができる業者を選ぶためには、慎重かつ多角的に判断しなければなりません。
合法的な業者であれば、法人番号を取得しているはずです。法人番号を検索して、どのような業者であるのかを確認してみるとよいでしょう。
また、合法的な業者は必要な情報を顧客に対して開示します。手数料体系が提示されるか、契約条件について平易な言葉で説明があるかなどによって確認できるでしょう。
そのほか、信頼できる業者を見極めるための調査方法として、レビューサイトなどの評価、評判をチェックする方法もあります。
実際に利用した顧客のレビューでは、具体的な取引事例の確認やクレーム対応の質、長期取引先の有無、業種別の対応力など、ホームページを見ただけではわからない、本当に知りたい情報が見つかるでしょう。
また、コンプライアンス部門や内部監査システムの有無、情報セキュリティ対策や苦情処理対応など、リスク管理体制が整備されているかどうかも、安心して利用できる業者かどうかを判断する重要なポイントとなるでしょう。
これらを総合的に分析することで、合法的で信頼性の高い業者を選択できる可能性が高まります。
違法なファクタリングだった場合の影響
ファクタリングが違法だった場合、利用者に深刻な影響を与える可能性があります。違法な業者は、場合によっては年利数百%に達する高い手数料を設定することもあるため、資金繰りが厳しい企業や個人にさらなる経済的負担を強いる結果となり、最悪の場合倒産するかもしれません。
違法な業者との契約は、貸金業法に抵触する可能性がある点にも注意が必要です。未登録の業者と契約した場合、利用者は法的保護を受けられず、トラブルが発生した際の救済措置が限られ、不当な取り立てや契約不履行のリスクがあっても保護されません。
また、企業の信用が低下し、取引先との関係が悪化するかもしれません。社会的信用の喪失は、長期的にはチャンスの喪失および経営状態の停滞につながる可能性があります。そのほか、利用者が高利の手数料を支払うことで、返済能力を超えた負担がかかり、他の借入れや支払いが困難になることも考えられます。
また、違法業者は、強引な取り立てをすることもあるでしょう。取り立てによって、利用者は精神的なストレスや不安を抱え、企業の運営にも悪影響が及ぶほか、従業員や取引先との関係にも亀裂が入る可能性があります。長期的には、企業の信用力やイメージに傷がつくでしょう。
違法な業者の存在は、安全なファクタリングのイメージを悪くします。結果、多くの企業が利用しにくくなり、経済全体の活力を低下させる要因となりかねません。
違法なファクタリングを利用した場合、どのような影響がある?まとめ
違法な業者およびファクタリングは、利用者である企業や個人に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。違法なファクタリングは、償還請求権付きであることが多く、債権が未回収になった場合のリスクを利用者が負わなければなりません。また、本来は不要な保証人や担保の設定、非常に高い手数料の支払いを求められたりもします。
これらの多くは実質的に貸金とみなされます。貸金業の登録をしていない業者が行うのは法律違反です。利用すればトラブルに巻き込まれたり、財務的な負担が増加し、経営にも悪影響が出るでしょう。
合法で安全なファクタリングのためには、契約前に情報をできる限り集めておき、信頼できる業者を選ぶことが何よりも大切です。