請求書先払いの手数料相場は、その他の手段と比較して高い?
「請求書の支払いは来月なのに、今すぐ資金が必要…」といった悩みを抱えている個人事業主やフリーランスの方は少なくありません。資金繰りの問題は、ビジネスを営む上で避けて通れない課題です。とくに、個人事業主やスタートアップにとっては死活問題となることもあります。
資金調達の手段としては、銀行融資が一般的に知られています。しかし、銀行融資を受けるには時間がかかり、なおかつ条件も厳しくなっています。銀行融資以外の方法もありますが、高金利の借入れは経営を圧迫する可能性が大きく、安易に利用できないのではないでしょうか。
そこで今、注目されているのが「請求書先払い」というサービスです。このサービスを利用すれば、未回収の請求書を現金化できます。ただし、手数料の相場やサービス会社の選び方を知らないと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
本記事では、請求書先払いのしくみ、手数料の相場、活用法まで解説します。資金繰り改善の参考となれば幸いです。
目次
資金繰り改善の強い味方、請求書先払いとは
請求書先払いは、未回収の請求書を現金化できるサービスの総称です。従来の資金調達手法とは一線を画す、柔軟な資金繰りを支援する手段といえるでしょう。
請求書先払いのしくみと特徴
請求書先払いでは、事業者が発行した請求書を、サービスを提供する会社が買い取り、現金を提供します。通常、個人事業主やフリーランスは請求書を取引先に提出して、その額面が支払われるまで数週間から数ヶ月待つ必要がありますが、このサービスを利用すれば、最短でその日のうちに資金を調達できます。
たとえば、緊急の設備投資が必要な場合や、突発的な人件費の支払いが迫っている状況、または新規プロジェクトの費用を工面したい時などに請求書先払いは効果的といえるでしょう。
「今すぐ資金が欲しい」という切実な経営者の声に応える、まさに即効性のある資金調達手法だと言えるでしょう。
ファクタリングとの違い
ファクタリングと請求書先払いは、本質的に同じサービスを指しますが、以下の点が異なります。
ファクタリングは、主に中小企業向けのイメージが強いですが、請求書先払いはフリーランスや個人事業主など、より幅広い層をターゲットにしている傾向があります。また、
利用のしやすさの面においても、請求書先払いは、ファクタリングよりも気軽に利用できるように設計されていることが多いでしょう。取扱金額においても、請求書先払いでは、1万円程度の少額から対応していることがありますが、ファクタリングのような高額の取引には対応していないことがほとんどです。
申込み手続きでは、請求書先払いサービスはほとんどがオンライン完結型で、面談なしで利用できます。審査スピードも、請求書先払いはファクタリングよりも審査から入金までのスピードが速い傾向にあります。
ここに挙げた違いは、提供会社によって異なることがあるため、具体的な利用条件は各サービスで確認してください。
銀行融資との違い
銀行融資と請求書先払いは、資金調達の方法として大きく特徴が異なります。銀行融資は借入金であり返済義務がありますが、請求書先払いは売掛金の早期現金化であり借入ではありません。
また、手数料や金利の面を見ると、銀行融資は担保の有無や銀行によって異なりますが、一般的に1%~3%程度の金利がかかります。一方、請求書先払いはサービスや取引額によって異なりますが、2%~10%程度の手数料がかかります。
審査や手続きの面では、銀行融資は厳格な審査があり時間もかかるのに対し、請求書先払いはAI審査の導入により最短1時間程度で審査が完了することもあるのが特徴です。必要書類も、銀行融資は財務諸表など多くの書類が必要ですが、請求書先払いは多くが請求書と本人確認書類のみで手続きが可能です。
取引先への影響については、銀行融資は取引先に知られることはありませんが、請求書先払いも2者間取引の場合は取引先に知られることはありません。利用目的は、銀行融資は長期的な事業資金や設備投資などに適していますが、請求書先払いは短期的な運転資金や緊急時のつなぎ資金として利用されることが多いものです。
請求書先払いは手続きが簡単で迅速な資金調達が可能ですが、手数料が比較的高いため、緊急時や一時的な資金需要に適しています。一方、銀行融資は手続きに時間がかかりますが、金利が低く、長期的な資金調達に向いています。そのため、状況や資金需要に応じて、適切な方法を選択する必要があるでしょう。
手数料相場の比較
請求書先払いの手数料は、資金調達にかかわるコストを左右する最も重要な要素であり、事業の収益性に直結する重要な指標と捉えるべきでしょう。そのため、請求書先払いの利用を考えるなら、手数料相場についての知識は必要です。
請求書先払いの手数料相場
請求書先払いの手数料相場は、請求書の額面によって大きく変動します。通常、請求書の額面に対して2%~10%の範囲で設定されることが多く、比較的少額の請求書(50万円未満)の場合、手数料率は比較的高めの8%〜10%に設定される傾向があります。
一方、100万円以上の大口の請求書では、手数料率が3%〜5%程度まで下がることが多いのが特徴です。大きな金額の方がサービス会社の報酬も高くなるため、手数料率を低く設定できることが理由です。ただし、金額が大きくなれば審査も厳しくなります。
参考までに、請求書先払い以外の資金調達手段の手数料(金利)相場を見てみましょう。
・日本政策金融公庫
担保ありの金利相場:約1%
担保なしの金利相場:約2%
・銀行融資
プロパー融資の金利相場:0.45%~1.9%
メガバンク(担保あり)の金利相場:1.5%~2%
地方銀行の金利相場:2%~3%
・ノンバンク
担保ありの金利相場:金利5%~15%
担保なしの金利相場:金利6%~18%
・銀行系ビジネスローンの金利相場:金利1%~15%
・ファクタリング
2者間の手数料相場:10〜30%(年率120~360%)
3者間の手数料相場:1〜9%(年率12~108%)
医療(診療報酬)ファクタリングの手数料相場:0.3〜2%(年率3~24%)
国際ファクタリングの手数料相場:1〜2%(年率10~24%)
保証型ファクタリングの手数料相場:0.2~1.3%(年率2〜15%)
・手形割引の手数料相場:15%~30%
・保証協会付き融資の金利相場:1.5%~3%
・制度融資の金利相場:1%~3%
これらの手数料(金利)は一般的な相場であり、実際の金利や手数料は個々の状況や審査結果によって変動する可能性があります。
請求書先払いの手数料相場は、融資に比べるとかなり高いと言わざるを得ません。そのため、状況によってノンバンクやビジネスローンなどを利用した方が、手数料を抑えられるケースもあります。
手数料に影響を与える要因
手数料の算定には、複数の要素が絡み合っています。たとえば、事業の業種や規模、取引先の信用力、過去の取引履歴などが手数料率に大きな影響を与えます。
安定した大企業や官公庁との取引がある事業者は、より低い手数料率で利用できる可能性が高くなるでしょう。
最近の手数料相場の動向
近年は、請求書先払いサービスの審査にAIが導入されたことで、手数料の透明性と合理性が大きく改善されつつあります。従来の人が行う審査と比較して、AIによる自動審査は審査コストを大幅に削減できます。その結果、利用者にとってより低コストな先払いサービスが増えてきています。
最近はファクタリングにおいても取り入れられている、オンライン完結型のサービスの存在が、審査から入金までを短時間で処理でき、新たな利用者の獲得につながっていると考えられます。
請求書先払いサービス比較のポイント
請求書先払いサービスを提供する会社を選ぶ場合、手数料の比較だけでは不十分です。将来を左右する重要な判断となるため、多角的な視点が求められます。
手数料以外の重要な選択基準
請求書先払いのサービス会社を選ぶ際は、手数料以外の要素も大切です。その1つが、審査と入金までのスピードです。
審査のスピードは、資金需要を急ぐ事業者にとって最も重要な判断基準の一つです。申し込みから24時間以内に審査が完了するサービスと、1週間かかるサービスでは、緊急時の対応力が大きく異なります。
最短10分で審査が完了する会社や、午前中に審査が完了すればその日のうちに振込が行われる会社など、いつまでに資金を調達したいのかに合わせて、選ぶとよいでしょう。
また、利用可能な請求書の金額についても注意が必要です。初回利用時には上限が設定されていることが多く、その後の利用実績によって上限が拡大される場合があります。このため、将来的な利用計画を考慮しながら選ぶ必要があるでしょう。
さらに、必要書類についても確認しておくべきです。請求書先払いサービスでは、オンラインで手続きが完結できるサービスがほとんどのため、必要書類の提出はアップロードで完了します。
支払いが遅れた時の対応策についても考慮すべきです。クライアントからの入金が遅れた場合に、どのようなサポート体制が整っているかを確認することで、万が一のリスクにも備えられます。加えて、会社の信頼性も見逃せません。知名度や実績、評判をチェックし、安全かつ信頼できる会社を選ぶことで安心して利用できる環境となります。
これらのポイントを総合的に評価し、自身の事業規模や資金需要に最適な請求書先払いサービス会社を選択しましょう。
請求書先払いを活用するコツ
請求書先払いは万能の資金調達手段ではありません。戦略的かつ慎重に活用することで、はじめて真価を発揮できるサービスです。
計画的に利用する
無計画な請求書先払いの利用は、財務状況を危うくする可能性があります。月次の収支予測を綿密に立て、一時的な資金ショートを防ぐための補助的な手段として位置づけることが大切です。大型案件の前払い金や、季節変動が激しい業種における運転資金不足を埋める、緊急避難的な活用が望ましいでしょう。
請求書先払いと他の手段を組み合わせる
最も賢明なのは、複数の資金調達手段をバランス良く組み合わせることです。たとえば、銀行融資やクラウドファンディング、低金利の融資などの他の資金調達手法を組み合わせて活用することで、資金調達のコストを最適化し、資金繰りの安定性を確保できるでしょう。
依存を避ける
請求書先払いサービスは便利な手段ですが、長期的に利用した場合、手数料が積み重なることで、想像以上に経営を圧迫する可能性があります。
仮に、手数料が5%で月100万円の請求書を先払いした場合、年間で約60万円のコストが発生することになります。緊急手段として、短期の利用にとどめておきましょう。
請求書先払いの手数料相場は、その他の手段と比較して高い?まとめ
請求書先払いは、ファクタリングが中小企業向けであるのに対して、主に個人事業主やフリーランス向きの資金調達手段です。融資とは異なり、資金を借り入れるのではなく、請求書を利用して商品やサービスの提供完了前に資金を受け取るサービスです。
請求書先払いの手数料相場は通常2%〜10%の範囲で、請求書の額面や事業特性によって変動します。銀行融資などの金利と比較すると手数料相場は割高であるため、経営を圧迫しない程度に利用することが大切です。
現在、多くの会社が請求書先払いサービスを提供しています。その中から、自社に適した会社を選ぶには、手数料の安さだけでなく、審査スピードや入金の早さも重要な判断基準となります。
近年のAI技術やインターネットの発展により、請求書先払いサービスはより迅速で低コストなサービスの提供が可能な状況となりました。事業者にとっては利用しやすい環境ですが、他の資金調達手段とバランスよく組み合わせるなど、依存には注意が必要です。
請求書先払いを戦略的に活用するには、財務状況を常に把握することが大切です。計画的に資金調達を実行し、持続的な事業成長を実現しましょう。