ファクタリングへの下請法の影響とは?親事業者の債権資金化なども解説
ファクタリングに関係のある法律に「下請法」があります。
ファクタリングに関わってくる下請法とはどのような法律なのでしょうか。また、下請法によってファクタリングにはどのような影響が出るのでしょう。
下請法の内容やファクタリングへの影響、親事業者債権のファクタリングの可否などを分かりやすく説明します。
目次
親事業者の債権もファクタリングで資金化できる
下請事業者は「親事業者 の債権をファクタリングでお金に換えることは可能か」悩むのではないでしょうか。
ファクタリングで債権をお金に換えることで資金調達したくても、譲渡・売却の対象にするのが親事業者の債権だと、どうしても遠慮が出てしまいます。
結論から言うと、下請事業者が親事業者の債権をファクタリングで資金化しても特に問題ありません。親事業者の債権でもファクタリングは可能です。
下請法はファクタリングに影響する
親事業者の債権をファ クタリングの対象にすること自体は可能です。ただ、下請法が関係してくる可能性があります。
安心してファクタリングを利用するためにも、下請法がファクタリングに与える影響について知っておくべきです。
下請事業者の債権も資金化できるファクタリングとは?
ファクタイングと下請法の関係を理解するためには、ファクタリングのサービス内容やタイプ、種類について先に知っておいた方がスムーズです。
ファクタリングサービスの内容や種類、一括決済方式との違いについて説明します。
ファクタリングの2つのタイプ
ファクタリングとは債権の譲渡・売却・保証のサービスです。
ファクタリングには2つのタイプがあり、タイプによって内容や主な使用目的が違ってきます。
・買取型ファクタリング
・保証型ファクタリング
買取型ファクタリングは債権を譲渡・売却することで売却金を受け取るタイプのファクタリングです。よく資金調達に使われるタイプのファクタリングで、一般的に「ファクタリング」と言った場合はこの買取型を指しているケースが多いと言えます。
保証型ファクタリングとは、債権をファクタリング会社に保証してもらうタイプのファクタリングです。下請事業者の取引先が倒産などにより債権の支払いができなくなったときは、債権を保証しているファクタリング会社から保証金が支払われる仕組みになっています。
保証型ファクタリングは下請事業者が取引するときのリスク対策などによく使われます。
買取型ファクタリングの2つの種類
買取型ファクタリングにはさらに2つの種類があります。
・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
2社間ファクタリングは、ファクタリング会社と下請事業者の2社で行うファクタリングです。取引先や親事業者に資金調達を知られずに済むというメリットがある他、手続き完了まで早いというメリットもあります。早いファクタリング会社だと即日対応も可能です。
3社間ファクタリングは、ファクタリング会社と下請事業者、親事業者・取引先などの3社で行うファクタリングになります。3社間ファクタリングは親事業者や取引先に債権の資金化を知られてしまうのがデメリットです。その代わり、手数料が安いというメリットがあります。
ファクタリングと一括決済方式の違い
一括決済方式 とは、一括決済業者(ファクター)を通して下請事業者と取引先の決済を行う方法です。ファクタリングと一括決済方式は「他社を通して決済するところ」が似ているため、同じなのか違うのかよく分からないという方がいらっしゃいます。
ファクタリングは一括決済方式のひとつです。
一括決済方式は一括決済会社との関わり方によって4つの種類に分かれます。ファクタリングはその4つの種類のうちのひとつです。
ファクタリングは申込者とその取引先との間にファクタリング会社が入るタイプの一括決済方式になります。
あえて違いを挙げるとすれば、一括決済方式は4つの方法の総称で、ファクタリングは一括決済方法のうちのひとつという点です。
ファクタリングに影響する下請法とは?
下請法(下請代金支払遅延等防止法 ) とは、下請事業者を守るために制定された独占禁止法の特別法です。
下請事業者と親事業者の関係を考えた場合、どうしても親事業者は力が強くなってしまいます。結果、下請事業者に不当に圧力をかけたり、約束を破ったりする可能性があります。親事業者の力が強いために、下請事業者は泣き寝入りしなければならないような事態になるかもしれません。
親事業者が横暴なことをしないためにも下請事業者を守る必要があります。下請法はそのための法律です。
下請法には禁止事項と義務があります。禁止事項や義務がファクタリングに関係してきます。
下請事業者に親事業者がしなければならないこと(義務)
下請法には下 請事業者に対する親事業者の義務が定められています。
・親事業者は下請事業者に書面を交付する義務がある
・親事業者には支払い期日を決める義務がある
・親事業者には書類の作成、保存の義務がある
・親事業者には遅延利息を支払う義務がある
親事業者の義務の中で特にファクタリングと関係があるのは「支払い期日を決める義務」です。
ファクタリングに債権を売ろうとしても親事業者が支払い期日を決めずに放置している状態だと、ファクタリング会社に「内容が不明瞭な債権は買取できない」と言われてしまいます。
親事業者は下請事業者に対して「商品の受領日から60日以内に支払わなければいけない 」という義務があります。
ファクタリングで売買の対象になる債権は支払い期日が1カ月~2カ月のものが多くなっているため、親事業者が義務を守ることにより、下請事業者は安心してファクタリングを利用できるわけです。
下請事業者に親事業者がしてはいけないこと(禁止事項)
下請法には下請事 業者に親事業者がしてはいけないことも定められています。
・親事業者は代金の受け取りを拒否してはいけない
・代金の支払いの遅延も禁止である
・下請事業者に支払う代金を減額してはいけない
・商品を不当に返品するのは禁止である
・親事業者は給付内容を変更してはいけない
・不当にやり直しの指示を出すのも禁止である
・割引困難な手形の交付することも禁止である
・有償支給原材料等の対価の早期決済をしてはいけない
・親事業者は下請事業者に報復措置をしてはいけない など
分かりやすく言ってしまうと、親事業者だからと言って、自分の力・立場の強さを利用し不当に「取引の内容を変えるな」「支払いをずるずると引き延ばすな」「理不尽な要求をするな」ということです。また、「払うものはしっかり払え」「約束を守れ」ということでもあります。
下請法でファクタリングに影響する部分
下請法はファクタリングに対して具体的にどのような影響を与えるのでしょうか。下請法の内容を踏まえ、ファクタリングへの影響について順番に見て行きましょう。
下請代金を減額してはいけない
親事業者だからと言 って下請事業者への支払いを勝手に減額することや、圧力をかけて減額させるようなことは許されません。
取引の減額はファクタリングにも影響する部分です。
たとえば、下請事業者が100万円の債権をファクタリングで資金化しようとしたところ、親事業者から「やっぱり50万円に減額」と言われたらどうでしょう。下請事業者は支払うべき支払いを受けられないことになりますし、急に債権額を減らされてはファクタリング会社だって困ってしまいます。
ファクタリング会社のリスクや安心できるサービスの利用に影響するポイントです。
下請への代金支払いを遅らせてはいけない
親事業者だからといって支払い期日を破ってはいけません。「親事業者は商品・サービスを受け取ってから60日以内に支払いを行う」必要があります。
親事業者の勝手で支払いが遅れたり、支払い期日の引き延ばしに合ったりすると、下請事業者の資金繰りが影響を受けてしまいます。さらに、支払い日があまりにも長いような債権や、支払い日がころころ変わるような債権は、ファクタリング会社にとってリスクがあるため買取拒否の原因になってしまうのです。
代金の支払い期日も債権内容であることから、債権の資金化サービスであるファクタリングに影響を与えます。
下請に報復措置をしてはいけない
親事業者の勝手な振る舞いや不公平な行いに対して下請事業者が公正取引委員会や中小企業庁に報告した場合、親事業者は報告措置を取ってはいけません。
報復措置としては取引の中止や、発注する送品数の削減などが考えられます。理不尽な報復措置を受けることにより下請事業者が倒産する恐れもあります。ファクタリングによる資金調達も利用できないなど、影響が出てしまうのです。
親事業者の都合で返品してはいけない
親事業者の都合で「やっぱりいらない」と返品してはいけません。
親事業者の勝手な事情による返品が許されてしまうと、受けられるはずだった支払いも受けられなくなります。返品によって債権が減額、あるいは消滅してしまうのです。当然ですがファクタリングの利用にも影響が出てしまいます。
割引困難な手形を使ってはいけない
親事業者が取引に手形を使うこと自体は問題ありません。問題になるのは、金融機関での割引が難しいような手形の交付です。
割引困難な手形を交付されても資金調達が難しいため、下請事業者は困ってしまいます。
不当なやり直し や変更を迫ってはいけない
親事業者は下請事業者に対して「もっとクオリティの高いものが欲しい」「気に入らないから」など、不当な理由や事情でやり直しを指示してはいけません。また、親事業者側の一方的な理由や事情で取引の内容を勝手に変更することも禁止されています。
やり直しや取引の内容変更があると債権も影響を受けます。結果、債権を資金化するときのファクタリングにも影響が出てしまうわけです。
下請事業者がファクタリングで債権を資金化するメリット
下請事業者がフ ァクタリングを使うことには2つのメリットがあります。
・資金調達や資金繰りに役立てられる
・融資など他の資金調達方法と使い分けが可能である
ファクタリングは債権を使った柔軟な資金調達方法です。ファクタリングを使って支払い期日まで長い債権を資金化することで、資金繰りの改善や安定化にも繋がります。
ファクタリングは債権の売買です。対して融資は借り入れであり、資金調達の際に負債が増えるという特徴があります。
ファクタリングと融資はどちらも資金調達方法です。ですが、方法としての性質は異なります。ファクタリングを資金調達方法として取り入れれば、状況に応じて融資など他の資金調達方法と使い分けできるメリットがあります。
ファクタリングへの下請法の影響とは?親事業者の債権資金化のまとめ
下請法とは下請事業者を守るための法律です。
下請法での義務・禁止事項はファクタリングにも影響を与えます。下請法の義務・禁止事項を守ることは、安全なファクタリング利用に繋がります。
下請法の内容を知り、安心できるファクタリングを実現してください。