差し押さえ中でもファクタリングを利用する方法できる場合を解説
ファクタリングは、企業が資金繰りを改善するために利用する手段として注目されています。特に、差し押さえ中の企業でもファクタリングを活用できる可能性があることをご存知でしょうか。差し押さえとは、債権者が未払いの借金を回収するために企業の財産を差し押さえる法的措置ですが、ファクタリングは売掛金を第三者に売却することで資金を調達する方法です。差し押さえ中であっても、売掛金自体が対象外である場合や、売掛先の信頼性が高い場合にはファクタリングが利用できるケースもあります。
ただし、差し押さえ中にファクタリングを利用する場合、いくつかの重要なポイントがあります。売掛金の状況や売掛先の信頼度、さらにはファクタリング会社の審査基準が大きな影響を与えるため、利用可能かどうかは慎重に判断する必要があります。今回は、差し押さえ中の企業がファクタリングを利用する際のポイントや注意点について、詳しく解説していきます。
目次
差し押さえ中とはどのような状態か
差し押さえ中とは、裁判所や行政機関などが特定の財産を押さえて動かせないようにする法的な措置のことです。この状況になると、対象となった財産を自由に使ったり売却したりすることができなくなります。特定の財産には現金が含まれます。また銀行口座も差し押さえることができます。現金が差し押せられれば現金で支払うことができなくなりますし、銀行口座が差し押さえられると銀行口座からの引き出しや送金、口座振替などができなくなります。ここでは、差し押さえの原因とその結果、そして差し押さえ中の制約について詳しく解説します。
差し押さえの原因とは
差し押さえの原因には、主に借金や税金の滞納などの金銭的な問題、特に期日に約束した資金を支払えなかったことがあります。従業員への給与の未払いも差し押さえの原因としては多いものの一つです。借金を返済できなかった場合、債権者が裁判所に申し立てを行い、差し押さえに至ることがあります。また、国や自治体に納める所得税や住民税、固定資産税などの税金が滞納されると、行政機関(税務当局)が財産を差し押さえることもあります。いずれにしても、支払いを行っていないという外観に加え、裁判所等の公的機関が差し押さえを許容したことで差し押さえが開始される点を覚えておきましょう。単に支払いをしないと思われているだけではなく、第三者である公的機関が認めていることが、差し押さえ中になると信用が一気に失墜する原因になるのです。
差し押さえ対象となる財産の種類
差し押さえの対象になる財産は、多岐にわたります。具体的には、銀行口座、不動産、給料、自動車、家財などが含まれます。差し押さえは手間と費用がかかるため、その手間と費用に見合う財産を差し押さえることになります(日頃使っている家具屋家電で換価価値がないものは差し押さえされないケースが多いですが、支払いをしない人を困らせて支払いを促す目的で差し押さえられることもあります)。特に銀行口座が差し押さえられると、日常生活にも、事業活動にも大きな支障をきたすことがあります。一方で、生活に必要最低限のものは差し押さえの対象外とされる場合があり、たとえば基本的な生活費や一部の家具などは守られます。ただし、事業で利用する財産は生活に必要最低限に含まれることがまずなく、事業に使っている財産は全て差し押さえの対象となると覚悟しておくべきでしょう。
差し押さえ中の制約
差し押さえ中は、対象となった財産を勝手に売り払ったり、使ったりすることができません。例えば、不動産が差し押さえられた場合、売却や賃貸契約を結ぶことが制限されます。同様に、銀行口座が差し押さえられると、その口座からお金を引き出すことができなくなります。銀行口座からの送金もできなくなります。これにより、家計のやりくりや事業の資金繰りが困難になることがあります。
このような差し押さえそのものの効果に加えて、差し押さえをされることで信用ががらっと崩れ落ちるという影響もあります。それは企業が行う事業活動そのものへの制約となります。具体的には、新規の取引が行われなくなるとか、ライバル企業に差し押さえ中であることを知られると、お得意様に乗り換えを提案されるなどといった制約につながってくるのです。
差し押さえを解除する方法
差し押さえを解除するためには、二つの方法があります。一つ目は、支払ってない金額を支払うことで差し押さえの原因自体をなくすことです。そしてもう一つは、差し押さえを裁判所などに申し立てた人に差し押さえをやめてもらうことです。支払ってもないのに差し押さえをやめてもらえることがあるのか不思議に思われるかもしれませんが、債権者と和解して支払い計画を立てたり、支払いが行われると納得してもらうことができれば、不可能なことではありません。また、差し押さえの根拠が不当だと考えられる場合は、裁判所に異議を申し立てることも可能です。専門家の助けを借りることで、適切な対応がしやすくなるでしょう。
差し押さえを避けるための対策
差し押さえを未然に防ぐためには、何よりもまず支払いを忘れずに行うことが必要です。ですが支払いの期日を理解していても現金が回らずに支払いが滞ることがあります。そのような場合には早めに債権者や行政機関と話し合いを行い、返済計画を立てることが重要です。また、事業を見直して滞納しないようにすることも大切です。場合によっては、専門の相談機関に助けを求めることで、より良い解決策を見つけられる場合もあります。言い換えると差し押さえは財産の自由を制限する深刻な状況ですが、正しい知識と対策を持つことで対応が可能です。適切な行動をとり、早期に問題解決を目指しましょう。
差し押さえ中のファクタリングの利用
差し押さえ中ということは何らかの支払いを行っていない状態です。このような状態であればファクタリングは使えない、はなから審査に通らないと思ってあきらめてしまう事業者も多くいます。諦める必要はありません。差し押さえ中であっても、ファクタリング会社が許容するケースもあるからです。もちろん、差し押さえ中であることがファクタリング利用可否の判断に与える影響は甚大です。その結果に応じてファクタリングが使えたり、使えなかったりします。ここでは、差し押さえ中であることとファクタリングの関係やその理由について解説します。
差し押さえがファクタリング利用可否の判断に与える影響
差し押さえ中のケースでは、ファクタリング会社は通常より慎重に審査を行います。差し押さえされているということは資金繰りに問題があるなど財務が悪化していることを示す要因であるため、ファクタリング会社にとってはリスク要因となり得るからです。他で支払いを行っていないのであれば、ファクタリング会社に対しても支払いができない状態であること(あるいはその状態になること)を心配するというわけです。ただし、ファクタリングは売掛金を担保とする取引であり、売掛先の与信、つまり信用力が高ければ、利用できる場合もあります。
またファクタリング会社が差し押さえ中になった理由や背景が、単に支払うべきものを支払っていないだけではないと納得できれば、それだけで断られることはなくなります。支払いを行わない原因はお金がないということだけではないからです。身の回りに置き換えてみると、注文したものと違うものが届いたのでお金を払わない、というケースがあります。このようなケースでも支払いがなされていないことだけをもって差し押さえ中になりうるのです。当然、注文したものと違うもの、という点が納得されれば、支払わないことは正当なことになるので、問題なくファクタリングを通じて現金を手に入れることができるでしょう。
ファクタリング利用可否の判断で注目されるポイント
ファクタリングの審査では、利用する差し押さえの有無に加え、売掛先企業の信用力や売掛金の支払期日が重視されます。差し押さえ中であっても、売掛先が信頼できる大企業である場合や売掛金の支払いが確実である場合は、審査を通過しやすくなります。信用力のある大企業は分かりやすいのですが、売掛金の支払いが確実である場合はそれぞれのファクタリング会社によってみるポイントが異なります。いずれにしても、差し押さえの影響はあっても、売掛金そのものの質が重要な判断材料となります。
差し押さえがあってもファクタリング会社が許容可能なケースもある理由
差し押さえ中でもファクタリング会社が許容可能なのは、ファクタリングが借入ではなく、売掛金を売却する形で資金を調達する手法であるためです。売掛金の所有権がファクタリング会社に移ることで、差し押さえ中の影響を受けずにファクタリング取引が成立します。これはファクタリング会社が差し押さえ中の会社がどうなったとしても売掛金さえ回収できれば損失が発生しない仕組みだからです。この仕組みがあるため、差し押さえ中の事業者であってもファクタリングを有効な資金調達手段として利用できる可能性があるのです。
具体的な事例としては以下のような場合があります。
・売掛先が優良企業の場合
A社は資金繰りの悪化で税金を滞納し、口座が差し押さえられていました。しかし、A社の売掛先であるB社は大手企業で支払い能力が高く、過去に支払い遅延が一切ありません。ファクタリング会社はB社の信用力を評価し、売掛金が確実に回収できると判断してA社に資金提供を行いました。このように、差し押さえがあっても売掛先が信頼できる場合、ファクタリング会社はリスクを受け入れることがあります。
売掛金が差し押さえ対象外の場合
C社は取引先への売掛金を保有していましたが、自社の負債が原因で銀行口座が差し押さえられていました。ただし、売掛金そのものは裁判所の手続きにおいて差し押さえ対象から除外されており、C社が自由に取引可能な状態でした。ファクタリング会社はこの点を確認し、売掛金を買い取ることでC社に必要な資金を提供しました。法的に問題のない売掛金であれば、差し押さえがあっても取引可能です。
資金用途が差し押さえ問題の解決に繋がる場合
D社は税金滞納により差し押さえを受けていましたが、売掛金をファクタリングで現金化することで滞納分を即時に完済できる計画を立てていました。ファクタリング会社は、この資金提供によってD社の差し押さえ状態が解除され、正常な営業活動が再開されると判断。D社の資金計画に信頼性があるため、ファクタリング契約を許可しました。
差し押さえが理由で利用が難しい場合
一方で、差し押さえ中は、ファクタリングの取組みをファクタリング会社から拒否される場合も当然ながらあります。特に、売掛先がベンチャー企業や個人等で与信、信用力が低い場合や、売掛金が既に差し押さえの対象になっている場合には審査が通らない可能性が高くなります。この場合、差し押さえを解除するか、借入やリースバック等他の資金調達手段を検討する必要があります。
具体的な事例としては以下のような場合があります。
・売掛金が差し押さえ対象となっている場合
E社は取引先からの売掛金を保有していましたが、税金滞納が原因でその売掛金自体が税務署に差し押さえられていました。この場合、売掛金の権利はすでに税務署に移っており、ファクタリング会社が買い取ることができません。売掛金が差し押さえ対象である限り、資金化が不可能となります。
・売掛先の信用力が低い場合
F社は自社の銀行口座が差し押さえられており、資金繰りのためファクタリングを検討しました。しかし、F社の売掛先である取引先G社も財務状況が悪化しており、支払い遅延が頻発していることが判明。ファクタリング会社は、売掛先からの回収リスクが高いと判断し、契約を断念しました。このように、売掛先の信用力が低いと差し押さえの影響がさらに大きくなります。
・差し押さえが他の法的問題を示唆する場合
G社は過去に税金滞納が原因で差し押さえを受けていましたが、その後も従業員への給与未払いが発生していることが判明しました。ファクタリング会社は、G社の財務管理能力に深刻な問題があると判断し、売掛金の購入をリスクとみなしました。差し押さえが単なる一時的な問題ではなく、構造的な経営課題を反映している場合、ファクタリング会社は取引を避ける傾向があります。
差し押さえ中にも関わらずファクタリングをした影響
差し押さえ中にファクタリングを行うことで、従業員の士気を高め、離職リスクを低減するなどの社内的な影響や、地域社会や顧客との信頼関係を守る社会的な影響が期待できます。
給与の遅延を回避し士気を維持
差し押さえ中は給与支払いが遅れる場合がありますが、ファクタリングで資金を調達し、給与を予定どおりに支給することで従業員の不安を軽減できます。たとえば、給与遅延が原因で従業員が退職しかけた企業が、ファクタリングを利用して給与を支給し、事態を収拾した事例があります。社員が会社の取り組みに共感し、結束力が高まることもあります。
顧客満足度の維持
差し押さえ中でも納品やサービス提供を続けることで、顧客からの信頼を損なわずに済む場合があります。たとえば、大手クライアントとの取引を続けるためにファクタリングを利用し、予定どおり納品を完了した企業が、その後も継続的に受注を獲得できた事例があります。
地域社会での信頼確保
地元での評判を守るため、差し押さえ中でも経営を立て直す努力を続けることが重要です。ファクタリングを活用して事業を維持することで、「再建に向けて頑張る企業」として評価される場合があります。たとえば、地元新聞で経営改善の努力が紹介され、顧客から応援を受けた企業があります。
離職率低下と採用力向上
差し押さえの影響を迅速に解消することで、従業員が安心して働ける環境を維持できます。これにより離職率が低下し、企業の安定性がアピールされ、採用力も向上します。特にファクタリングで給与支払いを確保した企業では、求職者から「信頼できる企業」として注目を集める場合があります。
ブランドイメージの維持と向上
差し押さえの危機を乗り越えた企業は、再起事例として注目されることがあります。例えば、ファクタリングを活用して経営を再建した企業が、新聞や地域のビジネスイベントで紹介され、ブランドイメージの向上につながった事例もあります。
差し押さえ中でもファクタリングを模索しよう
差し押さえは、裁判所や行政機関が財産を押さえて動かせないようにする措置で、主に税金滞納や借金が原因で発生します。対象財産には現金、銀行口座、不動産、給与などが含まれ、生活や事業活動に大きな制約を与えます。この状態を解除するには支払いを行うか、債権者と和解する必要があります。また、差し押さえ中でもファクタリングを利用して資金調達が可能な場合があります。これは売掛金の信用力や売掛先の評価によるため、状況次第で解決策となり得ます。ファクタリングの活用により、給与遅延を防いだり顧客満足度を維持するなどの影響が期待されます。一方で、信用力の低い売掛先や売掛金自体が差し押さえ対象の場合は利用が難しく、別の対策が必要です。差し押さえは深刻な問題ですが、適切な知識と対応策を持つことで、事業継続の可能性を高めることができます。