一括ファクタリングとは?でんさいとの違いやメリット・デメリットを解説
ファクタリングの中には「一括ファクタリング」という方法があります。
このサービスはどのような方法なのでしょうか。一般的なファクタリングとはどのような違いがあるのでしょう。
この記事では一括ファクタリングのサービス内容やメリット、デメリット、でんさいとの違いや注意点などを分かりやすく解説します。各種サービスの中でも「比較して良い方法を使いたい」「通常のファクタリングとの違いは?」と悩んでいる方は、この記事でぜひ理解を深めてください。
目次
ファクタリングとは?
一括ファクタリングを理解するためには、まずは通常のファクタリングについて理解する必要があります。通常のファクタリングとはどのようなサービス内容になっているのでしょうか。
通常のサービスは、債権を使って必要な資金を準備するためのサービスです。取引先との取引で生じた売掛金などの債権を売却(譲渡)することで売却金を支払ってもらうのが資金化サービスになります。
売掛金などの換金の最大の特徴は「お金の貸し借りではなく売買」という点です。たとえば会社などはよく銀行の融資を利用します。融資は銀行からの借入(借金)になります。
売掛金などの換金は借金ではなく、債権の売り買いです。手元の債権を売買により資金に換えるところがファクタリングというサービスの最大の特徴だと言えるでしょう。
申し込みや手続きについては次のような流れで行います。
1.個人事業主や会社などが業者に「債権を資金化して欲しい」と申し込む
2.申し込みを受けた業者が債権内容も含め審査を実施する
3.業者が審査の結果や債権の買取条件を申込者に提示する
4.申込者は条件をチェックした上で業者と契約する
5.業者に債権を譲り渡し、申込者は売買代金を受け取る
一括ファクタリングとは?
一括ファクタリングはファクタリング会社が提供しているサービスの一種です。債権をお金に換えるという点では通常のサービスと同じです。
一括ファクタリングについて理解したい場合、通常の資金化との流れと比較することで理解しやすくなります。
一括ファクタリングの仕組みとは
利用時は次のような流れで行います。
A社(業者との契約側)とB社(利用者)の関係を例に手続きの流れを追ってみましょう。
1.まずはA社が一括ファクタリング業者に申し込む
2.業者がA社を審査し、利用条件を提示する
3.条件に納得したらA社と業者で契約を結ぶ
4.A社と取引関係にあるB社が一括ファクタリングを利用する
5.一括ファクタリング会社がB社の債権を買ってB社に売買代金を振り込む
6.A社は後から業者に取引分の支払いを行う
一括ファクタリングでは、売掛先であるA社が先に業者と契約しておくところが特徴です。その後で取引先が取引の際に生じた債権を契約先である一括ファクタリング会社に譲渡・売却し、債権の売買代金を受け取るという仕組みになっています。売掛先であるA社は後から一括ファクタリング会社に債権分の支払いを行うという流れです。
一括ファクタリングと通常のファクタリングとの違い
通常のサービスと一括サービスの違いは「債権を資金化するときの流れ」「売掛金などの債権を誰に支払うか」です。
引き続きA社とB社の取引関係で説明します。
・A社は業者との契約側
・B社は債権資金化の利用側
通常の売掛金などの資金化では、B社が業者に申し込みを行い、売掛債権などを資金化するという流れになっています。対して一括サービスでは、A社が「わが社に関する債権の資金化をお願いしたい」と前もって一括サービスの提供業者に申し込み、契約しておきます。そしてB社などと取引が発生したときは、A社があらかじめ契約している売掛金などの資金化業者にB社が債権を譲り渡し、資金化を行うという流れです。
通常のサービスではB社側が「業者を選んで申し込み、売掛金などを資金化する」ことになります。しかし一括サービスの場合、A社があらかじめ「契約先事業者を準備しておきますので、わが社との取引で資金化が必要なら利用してください」という流れで進めるわけです。
A社は売掛金などの支払い期日に、本来は取引先であるB社に支払うところ、契約先である一括サービスの契約業者に支払うという流れになっています。
一括ファクタリングのメリットとは?
一括ファクタリングには納入企業と支払い企業にそれぞれ違ったメリットがあります。
メリットについて分けて見て行きましょう。
納入企業が一括ファクタリングを使うメリット
取引における納入企業側が一括ファクタリングを利用することには3つのメリットがあります。
・信用力をアピールできる
・債権の資金化により迅速に代金を受け取れる
・手形や債権の管理負担がなくなる
利用側の会社がサービスを利用するためには審査を受ける必要があります。一括サービスを提供しているのは大手の業者が多いため、「大手に認められるなら安心」と信用力評価のアップが期待できるのです。
加えて、通常のサービスと同じく取引の売掛金を早期に資金化することで、迅速に代金を受け取れるというメリットもあります。資金調達や資金繰りを考えると、利用側の会社にもメリットがあると言えるでしょう。
また、サービスを利用することで債権や手形などを管理する必要もなくなります。管理負担を軽減でき、管理時の紛失リスク対策にもなります。
支払い企業が一括ファクタリングを使うメリット
取引における支払い側の会社が一括ファクタリングを利用することには2つのメリットがあります。
・手形を準備する必要がない
・取引におけるコスト削減が期待できる
取引の支払い側企業が債権の資金化業者とあらかじめ契約しておくことで、手形を準備する必要がなくなります。手形分のコストをカットできるメリットがあります。
会社間の取引にかかるコストは手形の発行だけではありません。振込手数料など、他にもさまざまなコストが発生することも少なくないのです。支払い企業側が業者と契約することにより、工夫次第でこうしたコスト削減にも繋がる可能性があります。
一括ファクタリングのデメリットとは?
デメリットについても納入企業側と支払い企業側では違っています。
こちらについても取引関係で分けて説明します。
納入企業が一括ファクタリングを使うデメリット
サービスを利用する側の会社が注意したいデメリットには次のようなものがあります。
・利用したくても取引先が契約していないと使えない
・手数料などのコストがかかってしまう
一括サービスを利用して債権を早期に現金に換えたくても、取引先企業が対応業者と契約していなければ使えません。利用の可否が取引先次第という点でデメリットがあります。
また、ファクタリング全般のデメリットとして、債権を換金する際は手数料などのコストがかかってしまいます。申し込みに際しては手数料などのコストについてもよく考えて検討した方が良いでしょう。
支払い企業が一括ファクタリングを使うデメリット
支払いを行う会社側にとってもデメリットがあるため注意が必要です。
・先に業者と契約しておかなければならない
・取引の支払いが手形などより短期間になってしまう
支払いを行う会社側は先に対応してくれる業者を探し、その上で契約を結んでおかなければいけません。業者選びや契約にはやはり時間と労力がかかりますから、「毎日忙しい」「人手不足である」という会社にとっては負担になってしまうことでしょう。
また、債権の資金化契約を結んだ場合、支払側の会社の支払い期日が短くなってしまうというデメリットもあります。
下請代金支払遅延等防止法における最長の支払い期日は120日になっています。取引先が契約先の業者で債権を資金化した場合は期間が60日まで短くなってしまいますので、注意が必要です。
「できるだけ支払い期日を長くしたい」「支払い期日を長くすることで資金繰りを調整していた」という会社は特に注意したいデメリットだと言えるでしょう。
なお、取引の際の支払い期日は、現在短くする方向で動いています。手形の支払い期日に関しても、2024年3月31日までに「60日にする」方向で動いています。将来的には60日が基本的な基準になり、このデメリットはあまり気にする必要のないポイントになるかもしれません。
一括ファクタリングとでんさいの違いとは?
債権を譲渡・売却により資金化する際に「でんさい」との違いが問題になります。取引の際に利用される「でんさい」とはどのような違いがあるのでしょうか。
まず「でんさい」とは、「電子記録債権」のことです。電子的な記録・データとして管理・譲渡・支払いなどが行われる債権がでんさいになります。
でんさいと一括ファクタリングには次のような違いがあります。
・目的と使途
・償還請求権の有無
でんさいは事業者間の取引の円滑化のために作られました。でんさいに加入している事業者間は電子的な債権を使い、スムーズに決済できる仕組みです。
また、でんさいは債権の資金化ではなく債権そのものです。データ・記録としての債権になります。支払いが行われるのは、本来の支払い期日です。対して一括ファクタリングは債権そのものではなく、あくまで資金化サービスになります。支払い期日前に売掛金などを現金化することを指します。
一括ファクタリングの契約方式は「償還請求権なし」が原則です。償還請求権なし(ノンリコース)とは、業者側が売掛金を買った後に回収不能などの事態に陥っても、一括ファクタリング会社側が「買い戻せ」とは言えないタイプの契約方式になります。いざというときのリスクは一括ファクタリング会社が負う契約が償還請求権なしの契約です。
でんさいは逆で「償還請求権あり」となっています。いざというときのリスクやダメージは取引をしている会社側が負う必要があります。
一括ファクタリングを利用する際の注意点とは?
特定の会社との取引で生じる債権を包括的に(一括して)資金化する方法を利用する際は、注意したいポイントがあります。
・手数料は取引している両社にかかる
・利用できないことがある
一括ファクタリングは取引をしている両社が手数料を負担する点に注意が必要です。
たとえばA社とB社が取引をした場合、A社だけが手数料を負担するわけではなく、B社だけの負担というわけでもありません。A社が契約し、B社が利用するわけですから、それぞれの手数料がかかるのが基本です。
また、売掛金などを譲渡・売却しようと思っても、信用力などが原因で資金化を断られることがあります。注意してください。
一括ファクタリングとは?でんさいとの違いやメリット・デメリットのまとめ
一括ファクタリングとは「ある会社の取引で生じる売掛金などを包括的に(一括して)資金化する契約・サービス」のことです。
一括ファクタリングにはメリットもありますがデメリットや注意点などもあります。注意したいポイントをよく理解し、通常のサービスとも比較しながら使うことが重要です。契約を検討する際は自社のニーズや目的などについてもよく考えることも重要になります。
サービスを比較して有益な資金調達を行ってください。