ファクタリング利用の注意点とは?正しく使って資金繰り改善
ファクタリングは、適切に利用すれば企業の成長と安定に大きく貢献する可能性があります。しかし、ファクタリングを利用して調達した資金を活用するには注意が必要です。経営の現状と将来の計画を見据え、適切な利用を心がけなければなりません。ファクタリングの手数料は一般的に高く設定されているため、利益を減らさないためには会社選びと利用回数に注意を払う必要があります。この記事では、ファクタリングの注意すべきポイントについて解説します。
目次
ファクタリングの定義と概要
ファクタリングを利用するうえで、理解しておきたい概要を解説します。
ファクタリングの基本的な仕組み
ファクタリングは資金を調達するサービスのひとつで、ファクタリングを専門的に扱う会社へ売掛債権の証拠となる請求書を売却(譲渡)して、代金を受け取ります。利用した企業は、支払期日を待たずに、必要な資金を手に入れられます。
ファクタリングの基本的な流れは以下の通りです。
1.企業がファクタリング会社と契約を結ぶ
2.企業が商品やサービスを顧客に提供し、請求書を発行する
3.企業が請求書を売掛金の証拠としてファクタリング会社に提示する
4.ファクタリング会社は、請求書の金額から手数料を差し引いて企業に支払う
5.支払期日が来たら、企業は代金をファクタリング会社に支払う
ファクタリングの歴史と発展
ファクタリングの起源は古く、商人たちが遠隔地での取引リスクを軽減するために、現地の代理人(ファクター)を利用したことが始まりです。
現代のファクタリングの基本形は、20世紀初頭のアメリカで発展しました。とくに繊維産業において、季節性の高い商品の在庫管理と資金繰りの課題を解決する手段として広く利用されるようになったといわれています。
日本では1970年代後半から本格的に導入され、現在では中小企業を中心に幅広い業種で活用されており、近年はオンラインでの手続きが可能な新しいサービスも登場しています。
ファクタリングの特徴
ファクタリングは貸借対照表上、売掛金が減って現金が増加する取引となり、財務状態の改善が見込めます。また、売掛金の回収リスクも債権の譲渡(売却)とともに移るため、利用者の負担が軽減され、売掛金の額によっては高額の資金調達も可能です。
ファクタリングの利用が企業にもたらす利点
ファクタリングは売掛金をすばやく資金化できるため、多くの資金繰りに悩む企業にとって有効な手段といえます。
利点1. 資金調達のスピード
ファクタリングの最大の利点は、売掛金の現金化が早まることです。通常、企業間取引における支払いサイトは30日~90日程度が一般的ですが、ファクタリングによって待機期間を大幅に短縮できます。
最短で即日中の資金受け取りが可能となるため、急な資金需要や予期せぬ出費にも迅速に対応できます。また、キャッシュフローの安定化にもつながるでしょう。資金をスピーディーに調達できることは、成長期の企業や売上高の季節変動が大きい企業にとって効果的です。
利点2. 与信管理を外部委託できる
ファクタリングで、取引先の信用調査や売掛債権の回収をファクタリング会社へ委託できます。ファクタリング会社は与信管理について専門的な知識を持っているため、効率的な与信管理が可能です。自社の人的・時間的コストを削減でき、経営の効率化につながるでしょう。とくに、新規の契約先と取引を開始する際には、大きな役割を果たします。
利点3. 財務体質の改善
ファクタリングの利用で、財務状況が改善する可能性があります。売掛金の現金化により流動比率が向上し、貸借対照表から売掛金が減ることで総資産回転率(総資産を使って、どの程度売上を得られたかを表す指標)の改善につながるでしょう。借り入れへの依存度を下げることで金融機関からの評価向上につながり、将来的な資金調達の際に必要になる、交渉力を強化できます。
ファクタリング利用の潜在的なリスクと注意点
ファクタリングにはリスクもあります。利用の際、注意しておくべきポイントを解説します。
注意点1. コストの増加
ファクタリングの利用時には手数料(コスト)が発生します。手数料の設定は、売掛金の額面金額や支払期日、売掛先の信用度などによって変わります。
手数料率は通常、低い3社間方式で1%~5%程度、高い2社間では15%~20%、もっとも高い場合30%程度になることもあります。一般的に手数料は銀行融資の金利よりも高く、長期的に継続して利用した結果、総コストが膨らむ可能性がある点に注意が必要です。
また、手数料以外にも、契約手数料や管理手数料といった名目で追加費用が発生する会社も少なくありません。これらの費用については見積もり時に確認し、全体のコストを把握しておく必要があります。
注意点2. 取引先との関係への影響
ファクタリングの利用は、取引先との関係に影響があるかもしれません。債権が譲渡されることで、取引先が経営状態について不安を感じる可能性があります。影響を最小限に抑えるため、取引先とコミュニケーションを取り、良好な関係を築いておくことが大切です。
注意点3. 依存度が高まるリスク
ファクタリングは便利な手段であるため、依存してしまうリスクがあります。慢性的な資金不足の状態を一時的にごまかし続けることにより、根本的な経営改善が遅れてしまうかもしれません。
また、審査基準が変わり、急に利用できなくなるようなことがあれば、資金調達が困難になるリスクもあるでしょう。さらに、長期的に利用し続けることは、自社の信用力や資金調達力の向上につながらない可能性もあります。ファクタリングは一時的な資金調達の手段として活用し、同時に経営改善や財務体質の強化に取り組むことが大切です。
注意点4. 償還請求権の確認
ファクタリングにおいて、償還請求権(リコース)が設定される契約が存在します。償還請求権は、買い取った債権が回収できなかった場合、元の債権者(利用者)に対して、ファクタリング会社が金額の返還を求められる権利のことです。
一般的なファクタリングは、ノンリコース(償還請求権なし)の契約です。償還請求権があるファクタリングは「金銭消費貸借契約」とみなされると、貸金業法や利息制限法の適用対象となります。また、償還請求権が付いたファクタリングで高額な手数料を設定している場合、利息制限法や出資法に抵触する可能性があります。
ファクタリングを利用する場合、契約書の内容を十分に理解し、償還請求権の有無や利用条件を把握することが大切です。償還請求権付きの場合、リスクと法的な位置づけを確認する必要があるでしょう。
ファクタリング会社選びの注意点
ファクタリングの成功は、会社選びに左右されます。信頼できるファクタリング会社を選ぶ目を持つことが、利用者にとっては大切です。
会社選びの注意点1. 規模と歴史の確認
優良なファクタリング会社を選ぶには、規模と歴史を確認しましょう。会社の規模は資本金や従業員数、取扱高などでわかるため、数字を見て安定した経営基盤を持っているかを判断しましょう。さらに、会社の設立年や業界での経験年数を確認し、これまでの実績についても確認する必要があります。
一般的には規模が大きく歴史のある会社の方が、安定したサービスを提供できる可能性が高いといえます。ただし、新しいファクタリング会社でも、これまでになかった新しいサービスや柔軟な対応を提供していることもあるため、総合的に評価することが大切です。
会社選びの注意点2. 顧客の評判や口コミを確認
ファクタリング会社の信頼性を判断する上で、実際の利用者の声は参考になるでしょう。レビューや口コミサイトでの評判を確認することをおすすめします。特に注目する点は、サービスの質や対応の迅速さ、契約条件の透明性、トラブル発生時の対応などです。
会社選びの注意点3. 手数料の透明性
ファクタリング会社を選ぶ際には、手数料について明確に説明があるか、見積もりが詳細で、隠れた費用がないかをチェックしましょう。
手数料についての説明がわかりやすく透明性が高い会社は、顧客との信頼関係を重視しているといえます。利用時には、複数の会社の見積もりを比較し、わかりにくい部分がないか確認してください。
会社選びの注意点4. 追加費用の有無
基本的な手数料以外に、追加で発生する可能性のある費用についても確認が必要です。追加で必要になる費用には、以下のようなものがあります。
・契約締結時の初期費用
・書類作成や管理にかかる事務手数料
・早期返済時の手数料
・契約更新時の費用
これらの追加費用の有無や金額を事前に確認し、トータルコストを把握しましょう。追加費用が多いと、見かけは手数料が低くても、最終的なコストは高くなる可能性があるため、注意が必要です。
会社選びの注意点5. カスタマーサポートの質
ファクタリングを利用する際、とくに初めて利用する場合、さまざまな疑問や問題が発生する可能性があります。カスタマーサポート体制が整っている会社なのか、以下の項目について契約前にチェックしておくとよいでしょう。
・問い合わせへの対応時間
・電話やメール、チャットなど、連絡手段はどのようなものがあるか
・当者の知識レベルと説明の分かりやすさ
・緊急時の対応体制
実際に問い合わせてみることで、サポートの質を判断できます。迅速で丁寧な対応ができる会社を選べば、利用者は安心できるでしょう。
会社選びの注意点6. 専門知識を持つスタッフの有無
ファクタリングは担当者の知識が重要です。財務や会計に関する深い知識を持っているか、業界の課題や需要を理解しているか、最新の法規制や市場動向に精通しているかなどを確認してください。
専門知識を持つスタッフがいる会社を選ぶことで、より適切なアドバイスや提案を受けられる可能性が高まります。また、複雑な契約内容や特殊な取引があるケースでも、適切に対応できる可能性が高くなります。
ファクタリング利用の注意点とは?正しく使って資金繰り改善 まとめ
ファクタリングは、企業の資金繰りを改善する有効な手段です。しかし、企業経営に生かし、適切に利用するためには注意するべきポイントが多数あります。
ファクタリングでは、希望額を調達できるようにコストを常に意識しておかなければなりません。そのためには、手数料負担がどれくらいになるのかを十分に理解し、他の資金調達手段と比較して、最適な選択をする必要があります。
そのほか、追加費用や償還請求権の有無など契約内容を精査し、信頼できるファクタリング会社を選ぶことも大切です。
また、ファクタリングへの過度な依存を避け、あくまでも一時的な資金調達手段として位置付けることも忘れてはいけません。資金繰りを改善するには、ファクタリングの利用と同時に、根本的な財務改善に取り組むことも必要といえるでしょう。